心中天網島——恋と義理に引き裂かれた人間の悲劇を描いた傑作
近松門左衛門は「義太夫節」の竹本義太夫と組んで数多くの浄瑠璃・歌舞伎を創作した。代表作は「曽根崎心中」(1703年)と「心中天網島」(1721年)で、いずれも実際の情死事件を素材にした。当時、情死を美化するとして幕府が規制したにもかかわらず、その人気は衰えなかった。近松は「虚実皮膜論」(フィクションと現実の皮一枚の隔たりにこそ芸術がある)という独自の芸術論を展開した。「日本のシェイクスピア」と称される近松の作品は今も上演され続けている。