1960年代、急成長する京セラで稲盛は「すべての社員が経営者意識を持つには」と悩んでいた。試行錯誤の末、全社員を5-50人の小集団(アメーバ)に分け、各単位が独立採算で売上・コスト・利益を把握、「時間当たり採算」で効率を競う仕組みを開発。この「アメーバ経営」により、末端社員まで経営参画意識を持ち、生産性が劇的に向上した。稲盛自身「これは社員の心を一つにする哲学と、精密な会計管理の両輪で初めて機能する」と語った。後にJAL再建でも同システムを導入、わずか2年で3年間で10兆円の負債を整理し再上場させる「再生の奇跡」を実現。アメーバ経営は『アメーバ経営』(2006年刊)等で体系化され、世界700社以上で導入されている。
2010年1月19日、日本航空(JAL)は会社更生法の適用を申請、負債総額2兆3千億円は事業会社としては戦後最大。民主党・鳩山由紀夫政権は稲盛に「国のために」と会長就任を依頼、78歳の稲盛は航空業界未経験ながら無報酬で引き受けた。着任後、まず全従業員4万8千人の3分の1にあたる1万6千人リストラを断行、不採算路線48路線を撤廃。並行して「JALフィロソフィ」という経営理念手帳を全社員に配布、「お客様第一」「利他の心」を徹底。アメーバ経営を導入し、各部門が独立採算で経営意識を持つ体制に転換。結果、2011年3月期(再建1年目)に営業利益1,884億円(従来最高の約4倍)、2012年3月期に2,049億円の史上最高益を達成。2012年9月19日、東京証券取引所に再上場を果たした。この再建は「破綻後わずか2年8ヶ月で再上場」という世界的にも稀有な事例として、MBA教材にもなっている。稲盛の経営哲学が実証された決定的事件として記録された。