平安時代前期を代表する歌人・貴族。平城天皇の孫として生まれ、六歌仙・三十六歌仙の一人に数えられる。「伊勢物語」の主人公「昔男」のモデルとされ、その生涯は情熱的な恋愛と旅を軸とする。藤原氏全盛の時代に皇族の血を引きながらも政治的に恵まれず、地方官として各地を歴任した。東下り(東国旅行)の折に詠んだ「名にし負はばいざ言問はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」(古今集)は、都に残した恋人を思う望郷の情を鮮やかに表す。小野小町とともに「色好み」の典型として後世に語り継がれ、和歌の美学において恋と自然を結びつける業平様式は平安文学の一大潮流を形成した。