上行寺は大阪市港区弁天に位置する本門法華宗の寺院である。本門法華宗は日蓮聖人の高弟・日像(1269〜1342年)が京都への布教を進めたことを機縁に発展した宗派で、室町時代に京都の商人・職人層に広まった「洛中法華宗」の流れを汲む。「上行菩薩」(じょうぎょうぼさつ)は法華経に登場する菩薩で、末法の世に法華経を弘める使命を担うとされる。日蓮聖人は自身を上行菩薩の生まれ変わりと自認しており、この寺号はその信仰を反映したものと考えられる。大坂の法華宗寺院群は天正年間(1573〜1592年)の「天正の法論」や豊臣秀吉との関係など、戦国・近世の宗教史に深く関わる。港区弁天地区は近代の埋め立て・港湾開発によっ…