天台寺門宗は天台宗から分派した宗派で、滋賀県大津市の園城寺(三井寺)を総本山とする。山門派(延暦寺)と寺門派(園城寺)は平安時代以来たびたび対立したが、寺門派独自の密教・修法を守り今日に至る。覚円坊はこの寺門宗の法灯を多摩に伝える坊号寺院で、「坊」とは修行僧の宿舎・修行場を意味し、かつては修験的な性格も帯びていた可能性がある。木曽西は多摩丘陵の一角で、戦後の住宅開発によって農村から住宅地へと転換した地区である。かつての農村共同体の精神的支柱として機能していた本堂が現在も維持され、天台寺門宗の特色ある密教修法の伝統が静かに継承されている。