薬師温泉旅籠の起源は定かではないが、弘法大師空海がこの地の湯を発見したと伝わる。薬師如来を祀る小堂が温泉の由来とされており、古くから病や傷の癒しを求める人々が湯治に訪れたと考えられる。江戸時代には旅籠として整備され、山間の湯治場として機能していたとされる。現存する旅籠建築はこの時代に建てられたものとみられ、国の登録有形文化財に指定されている。明治・大正期以降も湯治客を受け入れ続け、硫黄泉の効能を求める人々に親しまれてきた。近代においても大規模な改変は加えられず、江戸期の建築意匠と温泉文化が一体となった空間が保持されてきた。現在も現役の宿泊施設として運営されており、参道に並ぶ石灯籠や湯けむりとと…