西沢渓谷一帯は秩父山地の深部に位置し、古くから険しい地形ゆえに人里から隔絶された秘境であったとされる。笛吹川の上流域にあたる東沢・西沢流域は、江戸時代以前より山岳修験道の霊場として入山者があったと伝わるが、詳細な記録は残っていない。近代以降、甲武信ヶ岳をはじめとする奥秩父山系への登山道が整備されるにつれ、この渓谷も山岳愛好家に知られるようになった。20世紀前半には周辺山域での鉱山・林業開発が進み、日本窒素肥料(日窒)が経営する鉱山への資材・物資輸送のため、渓谷沿いに森林鉄道(軌道)が敷設された。この鉄道は昭和中期の鉱山閉山とともに廃止されたが、廃線跡は後にトレッキングコースとして整備され、現在…