多良岳遍照院は、佐賀県太良町に聳える多良岳(標高996m)の山麓に位置する真言宗の寺院である。創建の詳細は定かでないが、弘法大師空海(774〜835年)が九州各地に霊場を開いたとされる平安時代初期の気風の中で、その信仰を基盤に草創されたと伝わる。寺号「遍照院」は弘法大師の謚号「遍照金剛」に由来し、大師信仰の根強さを示している。中世以降、多良岳は修験道の修行場として栄え、山岳信仰と密教が融合した霊場群が形成された。遍照院はその中核を担う寺院として、修験者や参詣者を受け入れてきたとされる。近世には九州各地の真言宗寺院とのつながりが深まり、四国八十八ヶ所霊場を模した「九州八十八ヶ所霊場」の一札所とし…