小野路は鎌倉街道の上道(かみつみち)が通る中世の宿場町で、鎌倉から武蔵・上野・信濃へと続く幹線道路の要衝として栄えた。幕末には豪農・小島鹿之助の道場に近藤勇・土方歳三・沖田総司らが農兵隊の訓練に訪れ、新選組結成前夜の修行の地として歴史に名を留める。千手院は真言宗豊山派に属し、奈良・長谷寺を大本山とする観音信仰の寺院である。「千手」は千本の手で一切衆生を漏らさず救う千手観世音菩薩を指し、慈悲の広大さを体現する。創建の正確な時期は不明だが、鎌倉街道の旅人や武士たちが道中の安全を祈って参詣したことが本院の歴史的背景を形成したと考えられる。現在も静かな里山の中に法灯を守り続けている。