薬王寺は江戸川区一之江に位置する真言宗豊山派の寺院で、「薬の王」を意味する薬師如来を本尊として祀る。一之江は江戸川区西部の旧農村で、江戸時代には広大な水田地帯であり、農耕の合間に村人たちは薬師如来の霊験を求めて当寺に参拝したと伝わる。薬師如来は古来、病気平癒・健康長寿・眼病治癒などの霊験で知られ、農作業の怪我や疫病に悩む村人たちにとって欠かせない信仰の対象であった。密教の護摩修法とともに、薬師如来への真言も唱えられ、村の祈祷寺として機能してきた。宗門人別改のもとでは地域の菩提寺としての役割も担い、江戸時代の農村社会を支えてきた。戦後に宅地化が進む一之江において現在も薬師如来への信仰を守り、病気…