寺を象徴するのが客殿欄間に伝わる初代「波の伊八」こと武志伊八郎信由の彫刻「波に宝珠」である。伊八は安房国長狭郡(現在の鴨川市)出身の宮彫師で、うねるように立ち上がる波の表現は江戸後期の房総を代表する仕事として知られ、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」に影響を与えたとも語り継がれてきた。寺自体は慈覚大師円仁が大多喜に開いたのち鎌倉時代初期に現在地へ移ったと伝わり、本尊の阿弥陀如来をはじめ伊八の彫刻を含む5件が千葉県有形文化財に指定されている。房総半島南東部、いすみ市の山あいに静かな伽藍を構える古刹である。