阿伏兎観音(磐台寺観音堂)は、瀬戸内海に突き出た断崖絶壁の上に立つ臨済宗妙心寺派・磐台寺の観音堂である。天正年間(1573〜1592年)に毛利輝元が航海の安全を祈願して建立したと伝わり、十一面観世音菩薩を本尊とする。古来より瀬戸内海を往来する船乗りたちの航海安全祈願の霊場として篤く信仰され、安産・子授けの観音としても広く知られてきた。江戸時代には歌川広重の浮世絵『六十余州名所図会』にその景観が描かれ、絶壁に朱塗りの堂が海へ突き出す姿が広く世に知られるようになった。近代以降も信仰は途絶えることなく続き、志賀直哉の小説『暗夜行路』(1921〜1937年連載)の舞台としても文学史に名を刻む。観音堂は…