母恩寺は大阪市都島区に位置する浄土宗の寺院である。「母恩」という寺号は仏教の根本的な徳目である報恩思想—とりわけ母親の恩に感謝する心—を寺名に込めたものと考えられる。浄土宗は法然上人(1133〜1212年)が開いた宗派で、念仏によって阿弥陀仏の浄土に往生することを説く。大阪の浄土宗寺院の多くは戦国時代の兵火や、1583年の豊臣秀吉による大坂城築城に伴う都市整備の過程で現在地に移転・再建されたものが少なくない。母恩寺もこうした歴史的変遷の中で都島に根を下ろし、地域の人々の葬送と先祖供養を長年にわたり担ってきた。明治期の宗制整備を経て現在も浄土宗寺院として地域信仰の中心を担っている。