稲荷信仰は伏見稲荷大社を総本社とし、全国に約三万社が鎮座するとされる日本最多の神社系統である。宇迦之御魂命は食物・農業・商業を司る神として、農民から商人・職人まで広く崇敬されてきた。武蔵野市緑町の稲荷神社は、緑豊かな武蔵野の自然に抱かれた農村集落の守護神として勧請されたと伝わる。緑町は武蔵野市の中央部に位置し、戦後の宅地開発により住宅地として整備されたが、「緑」の名が示すように武蔵野の豊かな自然の面影を残す地区である。農村時代には稲作と畑作の豊穣を祈る場として、宅地化後は商売繁盛・家内安全の祈願所として住民の信仰を集めてきた。現在も初午祭などの年中行事を通じて地区の人々と結びついている。