台東区蔵前三丁目に佇む榧寺は、江戸幕府の米蔵(御蔵)が立ち並び力士が多く集まった蔵前の地に根ざした浄土宗寺院である。蔵前は隅田川沿いの物流拠点として機能し、米問屋・廻船問屋・力士の内弟子宿など多様な人々が行き交う活気ある町だった。相撲の開催地としても知られ、土俵を踏む力士たちが武運と健勝を願って参拝した伝承も伝わる。榧寺はこうした蔵前の商人・職人・力士らの信仰を集め、法然上人の念仏思想に基づき阿弥陀如来への帰命を説いてきた。葬儀・年忌供養を通じて蔵前の庶民生活を支え、現代も台東区の下町文化の一端を担う。