図師町の熊野神社は多摩丘陵南端の農村、図師の地に鎮座する神社で、熊野三山に由来する熊野大神を祀る。図師は相模国と武蔵国の境に近い農村として栄え、近世には「絹の道」と呼ばれる絹織物の輸送路が通っていた。絹の道は八王子から横浜港へ絹を運ぶ商人が行き来した道で、図師周辺の農家も養蚕・絹織物に深く関わっていた。熊野神社はこの農村の鎮守として創建され、五穀豊穣・縁結び・病気平癒の御神徳を持つ熊野大神への信仰が農民の生活に溶け込んでいった。明治の神社整理以降も地域の氏神として維持され、現代においても図師の住民が農と歴史への感謝を捧げる場として親しまれている。