「海月」という寺名はクラゲ(水母)を指し、日本海の漁業文化と深く結びついた男鹿・北浦の風土を端的に示している。臨済宗妙心寺派は栄西を開祖の一人に数える禅宗の一派で、公案問答を通じた見性(悟り)の体験を重視する。秋田県内における臨済宗寺院は比較的少数だが、北浦地区には複数の妙心寺派寺院が集中するという特異な分布を示す。この背景には、中世の有力者による特定宗派の招致や、海上交易を通じた禅文化の伝播などが考えられる。海月寺は漁村の禅道場として、日常の労働の中に修行を見出す禅の精神を漁師たちに伝えてきた。波の音とともに坐禅を組む北浦の海辺の寺として、独自の風景を形成してきた。