龍泉寺は、弘仁11年(820年)に弘法大師空海が安房国を巡錫した際に開創したと伝わる真言宗の古刹である。空海が安房国に渡った記録は各地の縁起に残されており、本寺もその巡錫ゆかりの霊地として創建されたとされる。本尊の薬師如来は古来より病気平癒の仏として深く信仰され、医療の乏しかった時代には安房国南部の人々の心の拠り所となったと伝わる。中世には安房国を支配した里見氏をはじめとする武家の庇護を受け、真言密教の道場として命脈を保ったとされる。近世に入ると地域の民衆信仰の場として定着し、弘法大師信仰を核とした護摩祈祷の伝統が継承された。明治期の神仏分離令による影響を経ながらも廃絶を免れ、近代以降も真言宗…