「大龍寺」という寺名は龍神への崇敬を示すと同時に、禅の世界では「大龍」が大悟を得た高僧の象徴でもある。曹洞宗の叢林では龍頭・龍牌など龍の意匠が禅堂の飾りに用いられることが多く、大龍の名は禅的な覚悟の境地を表すとも読める。船川港は男鹿半島の主要港として明治以降に発展し、漁船・運搬船・定期航路が集まる拠点となった。大龍寺はその港町に位置する禅刹として、海と龍神への信仰と禅の修行を結びつけながら、港に生きる人々の信仰を集めてきた。只管打坐の精神で嵐を前にして静かに坐る禅の姿勢は、荒海に向かう漁師たちの心の支えになったと伝えられる。