祖谷渓は四国山地の深部、徳島県西部に位置する峡谷で、平家落人伝説と深く結びついた地域として知られる。平安時代末期の12世紀末、壇ノ浦の合戦(1185年)で敗れた平家の残党がこの険しい山中に逃れ定住したと伝わり、祖谷一帯は古くから秘境として人々に認識されていた。「ひの字渓谷」の名は、祖谷川がひらがなの「ひ」の字を描くように大きく蛇行する地形に由来し、この特異な地形は古くから地域住民に親しまれてきたとされる。江戸時代には祖谷地方は阿波藩(蜂須賀家)の支配下に置かれ、山深い地ゆえ独自の生活文化が育まれた。明治以降、交通の整備が進むにつれ外部からの訪問者が増え、渓谷の景観が広く知られるようになった。昭…