天ヶ瀬町は多摩川の渓谷が迫る急峻な地形に開かれた集落で、川沿いの険しい自然環境の中で人々が暮らしてきた地区である。八坂神社の祭神・素戔嗚尊は荒ぶる神として海や水を司るとされ、多摩川の氾濫や水難から集落を守る存在として地域に根付いたとみられる。中世以降に全国へ広まった祇園信仰の流れを受けて勧請され、夏祭りには疫病封じの祭礼が営まれてきた。江戸時代には多摩川の水運や漁業に携わる人々が当社に安全を祈願したとも伝わる。山あいの小さな集落に守られながら今日まで続く当社の祭礼は、天ヶ瀬町の郷土的アイデンティティとして地域住民に大切にされている。