「すべてを見せず、秘めることで深い感動が生まれる」という芸術論。能の演出論を超えて、文学・茶道・武道・現代アートまで日本の美意識の根本原理として継承されています。表現の制限を表現の力に変える逆説の美学。
新潟県佐渡市の大膳神社の能舞台は江戸時代築の佐渡最古の現役能舞台。世阿弥配流地の伝承と並んで、佐渡の能文化の象徴です。佐渡には現在も30以上の能舞台が現存し、世阿弥配流が島の能文化を育んだという伝説の根拠となっています。
世阿弥晩年の心情と佐渡の風景を能の謡曲文体で綴った独自作品。流人文学・能文学・地誌の三領域にまたがる稀有な作品で、原文は約30曲分。流刑という苦境を芸術に昇華した珍しい例として、中世日本文学史で高く評価されます。
確実な墓所は不明。東京都北区の西光院に伝・世阿弥の墓がありますが、京都の観世稲荷神社近辺・佐渡の正法寺など複数の伝承地があります。最期の地が佐渡か京か未確定の状況を、この多重伝承が反映しています。
観阿弥(1333-1384)は能の基盤を作った大成者、世阿弥はそれを哲学・理論として体系化した完成者。観阿弥は実演中心、世阿弥は『風姿花伝』など著作を残し、能を「学ぶ・教える」芸術として制度化した点が大きな違い。父子で能を完成させた稀有な系譜です。