島根県松江市に英語教師として赴任した八雲は、この町に魂を奪われました。
宍道湖、神話の国・出雲、武家の町並み——当時の松江は江戸時代の面影を色濃く残した城下町でした。近代化の波に飲み込まれる前の「本物の日本」がそこにあったのです。
八雲は「今の日本は急速に変わっている。変わる前に記録しなければ」という使命感を持ちました。
松江では旧士族の家柄の小泉セツ(1868-1932年)と出会い、結婚しました。
セツは八雲にとって単なる妻ではありませんでした。日本語が十分でない八雲のために、毎晩のように日本の民話・怪談・伝説をやさしい日本語で語り聞かせました。この「語り」が後の名作「怪談」の原点となります。