鞍馬寺(京都・左京区)は「鞍馬天狗(僧正坊)」が棲む霊山として知られる。平安末期、幼名「牛若丸」だった源義経が鞍馬山で修行し、鞍馬天狗から剣術を授けられたという伝説は日本中に広まっている。鞍馬山は「パワースポット」としても知られ、境内の金堂前には「尊天(そんてん)」の象徴である大きな天狗面が展示されている。
鞍馬から貴船神社へ続く山道は、水神信仰・天狗信仰を両方体験できる人気のハイキングコースだ。
高尾山薬王院(東京・八王子市)は744年創建の真言宗の古刹で、**飯縄大権現(いいずなだいごんげん)**を本尊とする。飯縄大権現は天狗の信仰と深く結びついており、山内には烏天狗と大天狗の石像・銅像が至る所に設置されている。
年間300万人超が訪れる高尾山は、都内からのアクセスが良く、修験道体験(火渡り修行・滝行など)も観光客に公開されている。参道の天狗焼き(天狗をかたどった焼き菓子)も人気の土産品だ。
愛宕山(愛宕神社)(京都・右京区)は古くから「愛宕の太郎坊(たろうぼう)」として知られる天狗の霊山だ。愛宕山の天狗は火伏せ(火災除け)の神としての性格を持ち、京都の料理店では「火迺要慎(ひのようじん)」と書かれた愛宕神社の火防札(ひぶせふだ)が台所に貼られているのが一般的だ。本能寺の変の直前、明智光秀が愛宕神社に参籠して連歌会を開いたことは歴史的な事実として伝わる。
御嶽神社(長野・木曽郡)は標高3,067mの御嶽山に鎮座する霊峰の神社で、江戸時代から「御嶽行者(おんたけぎょうじゃ)」と呼ばれる修行者が全国から集まる聖地だ。御嶽の天狗は山岳信仰・神道・仏教が混在した複雑な信仰体系の中に位置づけられ、特定の名前は持たないが山全体が天狗の霊域とされる。