梅郷の天澤院は曹洞宗の末寺として梅郷地区の山間部に境内を置き、竹林寺とともに梅郷における仏教信仰の核を担ってきた。「天澤」の名は天からの恵みと潤いを意味し、仏の慈悲が雨露のように衆生に注がれることを表す禅の理念に基づいている。梅郷は江戸時代から梅の名産地として知られ、多摩川上流の谷筋に梅林が広がる風光明媚な地であった。梅の栽培・加工を生業とする農家が多く暮らす集落の中で、天澤院は生老病死の節目に人々を支える寺院として機能してきた。梅の花期には参拝者が増え、境内と梅林の眺めが一体となる春の景色が地域の名物となっていた。明治以降の近代化を経ても梅郷の農業・観光の中心地としての性格は維持され、天澤院…