櫟野寺(いちいのじ/らくやじ)は滋賀県甲賀市甲賀町櫟野に位置する天台宗の寺院で、伝教大師最澄の開基と伝わる古刹である。本尊は像高312センチメートルにも及ぶ十一面観音菩薩立像(重要文化財)で、平安時代後期の作。日本最大級の秘仏観音として33年に一度の本開帳が行われる。神仏霊場巡拝の道第120番。境内の宝物殿には本尊のほか毘沙門天・薬師如来・地蔵菩薩・吉祥天・四天王など20体もの平安〜鎌倉時代の仏像が一堂に安置され、いずれも重要文化財に指定された圧巻の仏像群を擁する。「甲賀の観音さん」として地元で篤く信仰され、桜・新緑・紅葉の名所としても親しまれる。甲賀市の山間に静かに佇む里山の聖地で、滋賀県東南部の天台宗信仰圏の重要拠点である。
櫟野寺の創建は寺伝によれば延暦11年(792年)、伝教大師最澄が比叡山延暦寺を開創する前年、修行のため甲賀の山中に分け入り、櫟(いちい)の霊木に十一面観音を刻んで安置したのが始まりとされる。最澄はその後比叡山に登り天台宗を開いたが、櫟野寺は最澄ゆかりの古刹として天台宗の重要拠点となった。平安時代を通じて朝廷・貴族の崇敬を受け、伽藍が整備されて多くの仏像が奉納された。現存する本尊・十一面観音像(像高312cm)をはじめ毘沙門天・薬師如来など20体の仏像群はいずれも平安時代後期から鎌倉時代にかけての作で、当時の繁栄を物語る。中世には源頼朝・足利氏ら武家からの帰依を受け、特に近江守護佐々木氏の保護の…