興善寺は岬町多奈川谷川に位置する天台宗の寺院である。天台宗は平安時代初期、伝教大師最澄(767〜822)が中国・唐に渡って天台教学を学び、帰国後に比叡山延暦寺を開創したことに始まる。最澄は法華経を根本経典とし、円・密・禅・戒の四宗兼学という包括的な仏教を説いた。平安・鎌倉時代には比叡山から多くの名僧が輩出され、法然・親鸞・道元・日蓮など各宗の祖師もかつては天台の学侶であった。泉南地方への天台宗の浸透は古代末期から中世にかけて進み、地方の有力者や漁村共同体の帰依を受けながら寺院が整備されていった。興善寺は多奈川谷川の地に根ざし、地域住民の法事・葬儀を担う菩提寺として天台の法灯を受け継いでいる。