「報恩」の思想は仏教の根幹をなすものであり、弘法大師空海もまた師・恵果から唐で密教の伝授を受けた恩に報いるべく、帰国後の弘仁年間(810〜824年)から生涯をかけて仏法を弘め続けたとされる。真言宗では弘法大師への深い感謝と恩義を重んじる伝統が受け継がれ、師恩・仏恩への報謝は修行の根本姿勢とされてきた。報恩寺はこの精神を寺号に体現した寺院として大阪北区に創建され、地域の住民が仏恩・親恩への感謝を表す参拝の場として機能してきた。江戸時代の大坂では商人文化において師匠・親への恩義を重んじる価値観が根付いており、「報恩」の名を持つ寺院は商人・市民に特に親しまれたとされる。摂津国八十八箇所霊場は文化年間…