多聞寺は現在の墨田区墨田五丁目に位置する真言宗智山派の寺院で、毘沙門天(多聞天・ヴァイシュラヴァナ)を本尊として奉安する。多聞天は四天王のひとり・北方守護の武神として財宝と勝利をもたらす神とされ、戦国武将・武士・商人に広く崇拝された。「多聞」は梵語ヴァイシュラヴァナの漢訳名であり、そのまま寺名となっている。墨田五丁目周辺は隅田川沿いの旧農村・漁村で、江戸時代には川沿いの水運・農業・漁業に従事する人々が暮らしていた。毘沙門天への信仰は勝運・財福・護国にご利益があるとして幅広い層に受け入れられ、多聞寺はこの地域の人々の祈願所・菩提寺として機能してきた。現在も墨田の静かな一角で法灯を守っている。