薬王寺は大阪市中央区中寺に位置する日蓮宗の寺院で、「薬王」という寺号は法華経第二十三品「薬王菩薩本事品」に登場する薬王菩薩に由来する。薬王菩薩は衆生の苦しみを癒す菩薩として法華経に説かれており、日蓮宗寺院が「薬王」を号に用いることは法華経への深い帰依を示す。日蓮宗は鎌倉時代に日蓮聖人(1222〜1282)によって開かれた後、室町時代には畿内の商工業者に広く受け入れられ、大坂でも多くの日蓮宗寺院が成立した。中寺町は豊臣政権下で形成された寺院密集地区であり、薬王寺もこの歴史的流れの中で当地に定着した。「南無妙法蓮華経」の唱題を核とした修行と地域の菩提寺としての機能を担い、今日に至っている。