業平が東国(現在の関東地方)へ旅した際、一行は現在の東京・墨田川のほとりに到着しました。川には白くて嘴と足が赤い鳥が群れており、誰かが「あの鳥の名前は何というのか」と問いました。
「都鳥(みやこどり)」と教えられた業平は、遠く離れた都に置いてきた恋人のことを思い、こう詠みました。
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名にし負はば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと
意味:「都鳥という名を持つのなら、聞かせておくれ。私が恋しく思う人は、都で元気にしているかどうか」
「都鳥」は今でいうユリカモメのこと。遠い都への望郷と、残してきた恋人への切ない思いが、鳥への問いかけというユニークな形で表現されています。
この歌は**「古今和歌集」に収められ**、後に「伊勢物語」第九段「東下り」の名場面として後世に伝わりました。
「伊勢物語」は、平安前期に成立した歌物語です。「昔、男ありけり」という書き出しで始まる各段は、業平をモデルとした「男」の恋愛と旅を描きます。全125段からなり、特に「東下り」(第九段)は旅の中の恋情を詠んだ名場面として中学校の教科書にも登場します。