戦国・安土桃山時代は身分社会です。武士は刀を持ち、農民は刀を持てない。大名は威張り、家臣は頭を下げる。そういう時代でした。
でも利休は「茶室の中だけは、すべての人が平等でなければならない」と考えていました。
にじり口は刀を腰に差したままでは入れません。刀を持って入ろうとすると、入り口が狭すぎて引っかかってしまいます。
つまり、どんなに偉い武士でも——たとえ大名であっても——茶室に入る前に刀を外す必要があります。
また、にじり口の高さが60cmほどしかないため、立ったままでは絶対に入れません。誰でも必ず頭を下げて「にじって」(ひざをつきながらずりずりと進んで)入らなければなりません。
刀を外す=武力を捨てる。頭を下げる=相手に敬意を示す。
にじり口を設計した利休は、「この入り口を通った瞬間から、ここは身分も地位も関係ない、お茶の空間だ」ということを伝えたかったのです。