茶碗はもっとも目を引く道具だが、茶の湯の一席はそれ単体では成立しない。六つの主要道具がそれぞれ役割を担い、精密な「舞台装置」を形成する。
茶筅は一本の竹から作られる抹茶撹拌用の道具で、先端を細く割いて100〜120本もの穂が放射状に広がる構造になっている。奈良・高山は伝統的な産地で、職人が手作業で仕上げる。流派によって形状が異なり、表千家は穂が大きく開く形を、裏千家は内側に締まる形を好む。
茶杓は抹茶を茶入れや棗から茶碗へすくうための小匙で、竹製が基本だ。利休が自ら削った茶杓は茶道具の最高峰とされ、わずか数センチの道具に作者の哲学が込められる。名だたる茶人・大名が「花入れに桃の花を挿した夕暮れ」のような情景を**銘(めい)**として付けており、茶杓一本で一つの詩のような物語が宿る。
棗は薄茶用の抹茶を入れる小さな木製の容器で、形がナツメの実に似ていることから名付けられた。漆塗りで黒・朱・溜塗(ためぬり)などが一般的で、金蒔絵が施されたものは極めて高価だ。
水指は釜に補充する湯水と茶碗・茶筅をすすぐ水を貯める器。備前焼・信楽焼・染付磁器など素材は多様で、席の雰囲気に合わせて選ばれる。利休は簡素な木桶を水指に転用することを好んだとされ、この「見立て(みたて)」——日用品を茶道具に昇華させること——は侘び茶の重要な美学だ。
釜は茶室の炉や風炉に置いて湯を沸かす鉄製の容器で、霰釘などの地文のデザインで産地や時代が読める。芦屋(福岡)と天明(栃木・佐野)が名産地で、天明釜は素朴な鋳肌が侘び茶の美意識と合致するとして珍重された。