不動明王の像は独特の図像的約束事(アイコノグラフィー)を持ちます。
右手の倶利迦羅剣(くりからけん): 龍が巻きついた炎の剣です。煩悩・魔障を断ち切る知恵の剣であり、龍は煩悩そのものを表しています。
左手の羂索(けんさく): 罪人・衆生を縛って救い出すための縄です。「放っておかない。必ず救い取る」という誓願を象徴します。
炎の光背(迦楼羅炎・かるらえん): 背後に燃え上がる火焔(かえん)は、煩悩を焼き尽くす智慧の火です。インド神話の鳥神・迦楼羅(ガルーダ)の炎に由来するとされます。
磐石の台座(ばんせきのだいざ): 不動明王は蓮華座ではなく岩の上に立ち(または座り)ます。「磐石」は大地・不動の意志を象徴します。
憤怒相(ふんぬそう): 左目を細め右目を大きく開く「天地眼(てんちがん)」、牙を噛み締めた表情は、「怒りから救う」ではなく「怒りをもって救う」という逆説的な慈悲の表現です。