「むらまつのこくうぞうさん」として関東一円に知られる村松虚空蔵尊は、茨城県東海村に鎮座します。正式名称を「村松山虚空蔵堂」といい、奈良時代に行基(ぎょうき)によって開創されたと伝わります。千葉の千葉神社・栃木の輪王寺とともに「関東三大虚空蔵」の一つに数えられることもあります。
縁起によれば、行基が虚空蔵菩薩の霊木を彫刻し、この地に安置したのが始まりとされます。以来、「何でも願いを叶えてくれる」と民衆の間で深く信仰され、特に記憶力・知恵・商業繁栄を願う参拝者が絶えません。境内には樹齢数百年の杉木立が続き、静寂に身を置くと先達の祈りの重みが自然と感じられます。
四国八十八箇所遍路の第9番札所である法輪寺(四国霊場)は、徳島県阿波市に位置します。本尊は涅槃(ねはん)の印相を結ぶ虚空蔵菩薩。空海が虚空蔵求聞持法を修した霊場として深く崇敬されており、知恵・記憶の向上を祈願する遍路者が立ち寄る霊場として知られています。
四国遍路において虚空蔵菩薩を本尊とする寺院は少数ですが、空海ゆかりという格別の由緒が参拝者を引きつけます。静かな境内に立ち、弘法大師が百万回の真言を唱えた修行の様子に思いを馳せると、先達の精神が息づいていることが実感されます。
高知県室戸市の金剛頂寺(四国霊場26番)も、虚空蔵菩薩を本尊とする霊場として知られています。山号を龍頭山(りゅうずさん)といい、空海が虚空蔵求聞持法を修した地の一つと伝えられます。太平洋を望む高台に立ち、室戸の荒波を眼下に見渡す境内は、修行の場としての厳しさと雄大さを今も伝えています。
岐阜県にある虚空蔵寺(美濃)は、東海地方における虚空蔵菩薩信仰の拠点として地域に根付いた寺院です。地元の人々が「こくうぞうさん」と呼んで親しみ、受験合格・記憶力向上の祈願に多くの参拝者が訪れます。
出雲虚空蔵社は、神仏習合の文化が色濃く残る出雲地方における虚空蔵信仰の拠点です。神社の形式で虚空蔵菩薩を祀るという習合的な形態が、この地方の信仰の多様性を示しています。