江川家は鎌倉時代に伊豆に土着した武士の家系と伝わり、その居館が現在の江川邸の起源とされる。主屋は鎌倉時代の建築技法を色濃く残すとされ、日本最古級の民家建築の一つに数えられる。室町・戦国期を経て江戸時代には徳川幕府の直轄領である伊豆の代官所として機能し、江川家は世襲で韮山代官を務めた。近世を通じて地域支配の拠点となった屋敷は、幕末に第36代当主・江川英龍(号・坦庵、1801〜1855年)の時代に最も注目を集める。英龍は西洋の兵学・砲術を積極的に研究し、1853年(嘉永6年)のペリー来航前後には海防・近代化に尽力した。1842年(天保13年)には江川邸内で日本初のパンを焼いたと伝わる。英龍は185…