日前神宮(ひのくまじんぐう)・國懸神宮(くにかかすじんぐう)は和歌山県和歌山市秋月に鎮座する紀伊国一宮で、一つの境内に二つの本殿が並び立つ全国でも珍しい構成を持つ神社である。両宮を合わせて「日前宮(にちぜんぐう)」と通称される。日前神宮の御神体は日像鏡(ひがたのかがみ)、國懸神宮の御神体は日矛鏡(ひぼこのかがみ)で、いずれも『日本書紀』で天照大御神の岩戸隠れの際に作られた八咫鏡の同型異鋳であると伝わり、伊勢神宮内宮の御神体である八咫鏡と兄弟関係にあるとされる。延喜式神名帳では名神大社、伊勢神宮に次ぐ高い格式を持つ「神宮」号を許された数少ない古社の一つ。神仏霊場巡拝の道第10番。境内は紀ノ川南岸の鎮守の杜に囲まれ、広く静謐な空間を保つ。和歌山市内中心部からアクセスしやすく、紀州徳川家の崇敬を集めた歴史も持つ。
日前神宮・國懸神宮の創建は神武天皇東征の際にさかのぼると伝わり、紀伊国造(きいのくにのみやつこ)家により奉斎されたという。『日本書紀』の天岩戸の段では、天照大御神の岩戸隠れに際し石凝姥命(いしこりどめのみこと)が作った八咫鏡の同型異鋳の鏡が二面あり、それが日像鏡・日矛鏡として両宮に祀られたと記される。古代から伊勢神宮に次ぐ格式を持ち、平安時代の『延喜式』神名帳では名神大社・月次相嘗新嘗の幣帛に預かる別格の古社とされた。「神宮」の称号は古代より伊勢神宮・石上神宮・鹿島神宮など数社に限られた高位の格式である。中世には武家政権の崇敬を受け、源頼朝・足利尊氏らからの寄進記録が残る。戦国時代の紀伊国は雑…