薬王院は、嘉祥3年(850年)に慈覚大師円仁によって開かれたと伝わる天台宗の古刹である。平安時代、天台密教の修行道場として創建され、常陸国府と近い地理的条件から、国府に仕える僧侶たちの修学の場としても機能したとされる。本尊の薬師如来は現世利益の仏として古くから信仰を集め、とりわけ眼病平癒の御利益が広く知られた。境内には薬草園が設けられていたと伝えられ、仏教と医薬が結びついた独自の寺院文化が形成された。中世には常陸国内の武家勢力の興亡に伴い、寺勢の消長があったとみられるが、詳細は定かでない。近世には地域の庶民信仰の拠り所として存続し、法華経読誦と密教修法を組み合わせた天台独自の修行体系が継承され…