地福寺は慶長5年(1600年)頃に創建されたと伝わる浄土宗の寺院である。大磯の地に根ざした古刹として、江戸時代を通じて地域住民の信仰と生活に寄り添い、葬祭・供養の場として機能してきたとされる。明治以降、大磯は政財界・文化人の別荘地として発展し、温暖な気候と海浜の景観が多くの著名人を惹きつけた。明治・大正期を代表する文豪・島崎藤村(1872〜1943年)は晩年を大磯で過ごし、昭和18年(1943年)8月22日に同地で逝去した。藤村の遺骸は地福寺に葬られ、境内には質素な墓石が建立された。代表作『夜明け前』をはじめ近代日本文学に大きな足跡を残した藤村の墓所として、地福寺は文学史上の重要な聖地となり、…