龍泉寺は台東区竜泉に位置する真言宗智山派の寺院で、境内から清らかな泉が湧き出したことから「竜泉寺」の名が付き、やがてこの地域の地名「竜泉」の由来となったと伝わる。江戸時代から職人や庶民が多く暮らすこの一帯は、明治・大正期には文人にも愛された。泉鏡花の名作「婦系図」(1907年)では、湯島周辺を舞台に芸者・お蔦と医学生・主税の悲恋が描かれ、この竜泉寺町もその雰囲気を形成するエリアの一つとして知られる。龍泉寺は地域の鎮守的存在として住民の信仰を集め、年中行事や法要を通じて下町の人々の精神的支柱となってきた。現在も境内は静謐な空間を保ち、訪れる人に江戸以来の下町信仰の空気を伝えている。