神戸市長田区は古来から「永田(ながた)」の地名で知られる摂津の港近くの集落で、中世から漁業・製塩業が営まれてきた。常福寺はその長田区大谷町に位置する真言宗の古刹で、創建の詳細は不明ながら、江戸中期に成立した摂津国八十八箇所霊場の第85番に列せられるほどの信仰的歴史を持つ。弘法大師・空海の霊跡を四国から摂津へ移した同霊場は18世紀頃に整備され、大坂・兵庫の町人・農民層を中心に白衣巡礼が盛んに行われた。近代化に伴い長田区周辺では工場・商店が立ち並び都市化が急速に進んだが、寺院は地域住民の信仰と法要の場として守られ続けた。平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災で長田区は甚大な被害を受け、常福寺も被…