天照大御神の神話の中で最も重要な場面は、弟神・素盞嗚尊(すさのおのみこと)との対立です。素盞嗚尊は母・伊弉冉命(いざなみのみこと)が眠る黄泉の国へ行きたいと泣き叫び、高天原を荒廃させました。これを怒った天照大御神は武装して弟を迎え、誓約(うけい)を行いました。
誓約とは、互いの持ち物を交換して子を生み、その子の性別によって誓いを証明するという神話上の審判です。天照大御神の玉からは五柱の男神が、素盞嗚尊の剣からは三柱の女神が生まれ、双方が潔白を証明し合いました。この三柱の女神は宗像三女神として九州・宗像大社に祀られています。
しかし素盞嗚尊はその後も乱行を繰り返しました。田の畔を壊し、神殿を穢し、とうとう機織り女を死に至らしめます。悲しみと怒りに沈んだ天照大御神は、天の岩戸(あめのいわと)に籠もり、世界は暗黒に包まれました。
八百万の神々は天岩戸神社の地で対策を協議します。天鈿女命(あめのうずめのみこと)が神懸かりになって踊り出すと、神々の笑い声が天地に響きます。不思議に思った天照大御神が岩戸を少し開けた瞬間、天手力雄神(あめのたぢからおのかみ)が岩戸を引き開け、世界に再び光が戻りました。
この神話は、太陽の運行・農耕社会における冬至の再生・統治権の正当性など、多層的な意味を持ちます。天岩戸神社(宮崎県高千穂町)では今もこの神話が語り継がれ、高千穂神社の夜神楽では岩戸神話の情景が舞として奉納されます。