伊勢神宮最大の特徴は、式年遷宮(しきねんせんぐう)——二十年に一度、全ての社殿・御装束(おんそうぞく)・神宝(しんぽう)を新しく作り直し、隣接する用意されてきた土地(古殿地・こでんち)に御神体を遷す儀式——です。
式年遷宮は持統天皇四年(690年)に始まり、戦乱による中断(約120年間)を挟みながら現在まで続けられ、令和五年(2023年)は第六十三回を迎えます(次回は2033年予定)。
式年遷宮の思想的背景には**「常若(とこわか)」**という概念があります。常若とは「常に若々しい」という意味で、神はいつも新鮮で清浄な場所に鎮まるべきである、という神道の清浄観の表れです。二十年という周期は、木造建築の耐久限界と宮大工の技術継承(一人の職人が若者として学び、壮年で中心を担い、老いてから教えるのにちょうど三世代かかる)という実用的な理由とも重なります。
同じ社殿の「コピー」を作るのではなく、毎回同じ設計図・同じ材料・同じ工法で新たに作ることで、**「常に新しく、しかし常に同じ」**という逆説的な永続性が実現されます。これは日本の建築思想が「物質の永続」よりも「様式・技術・精神の永続」を重視することの象徴です。