サンスクリット語「バイシャジャグル」から始まる誓い
薬師如来のサンスクリット名はバイシャジャグル(Bhaiṣajyaguru)、直訳すれば「医薬の師」を意味します。漢訳では「薬師琉璃光如来(やくしるりこうにょらい)」とも呼ばれ、瑠璃(ラピスラズリ)のように清らかに輝く光で病苦の闇を照らすという願いが込められています。
薬師如来がまだ菩薩として修行していた時代に立てた誓いは全部で十二大願あります。この十二の誓いこそが、薬師信仰の本質を形づくっています。
戒律を守れない者でも薬師の名を称えれば清浄になれる
この十二の誓いに共通するのは、現世利益(げんぜりやく)——死後の救済ではなく、今この世での苦しみを直接取り除くという願いが込められているという点です。阿弥陀如来が来世の浄土往生を約束する仏であるのに対し、薬師如来は「今、ここにある苦しみ」に向き合う仏として、古来から特別な位置を占めてきました。
薬師如来像を見分ける最大の特徴は、**左手に持つ薬壺(やっこ)**です。この壺のなかには一切の病を治す薬が満ちているとされ、他の如来像には見られない薬師如来だけの持物(じもつ)です。右手は「施無畏印(せむいいん)」——恐れを取り除く印相(いんそう)——を結ぶのが標準的な姿です。