向嶽寺は応安6年(1373年)、抜隊得勝禅師によって開山された臨済宗の禅刹である。得勝禅師は中国から伝来した禅風を独自の形で展開し、向嶽寺派という臨済宗の独立した一派を形成した。創建当初より甲斐の守護・武田氏の外護を受け、武田家の祈願所として手厚く保護された。室町時代を通じて伽藍の整備が進み、現存する三門(山門)および枯山水庭園はこの時期に造営されたと伝わる。三門は禅宗建築の傑作として重要文化財に指定されている。戦国時代には武田信玄が深く帰依し、寺院の権威と経済的基盤はさらに強化された。しかし武田氏滅亡後は庇護者を失い、寺勢は一時衰退したとされる。江戸時代には幕府の宗教政策のもとで徐々に寺格を…