西願寺は上京区福大明神町の葭屋町通沿いに建つ末寺。「西願(さいがん)」の院名は、阿弥陀如来の西方極楽浄土への往生を希求する誓願——すなわち浄土系宗旨の「西方浄土信仰」——を直截に表したもの。浄土宗・浄土真宗いずれの系統にも多く見られる院号で、念仏信仰の道場としての性格を名に体現している。
葭屋町通は平安京の大内裏(だいだいり)の東辺・西洞院通から数えて二筋目東の通りに相当し、一条通との交差点(堀川一条)付近は陰陽師・安倍晴明の屋敷跡(現晴明神社)に近い歴史の深い一帯。また一条通南の上京区は近世を通じて西陣織の職人町として発達し、多くの念仏道場・末寺が散在した地域でもある。西願寺はこの旧市街地…