神奈川県逗子市新宿に鎮座する稲荷神社で、「正五位新宿稲荷大明神」と称する。祭神は保食命(うけもちのみこと)で、農業・商売・産業の守護神として逗子市新宿地区の氏子に代々崇敬されてきた。創建は江戸時代前期とされ、京都の伏見稲荷大社から分霊を勧請したと伝わるが、正確な年代の記録は残っていない。
境内最大の見どころは昭和32年(1957年)に改築された本殿で、流造様式の社殿が岩窟内の白木造の祠を覆う独特の構造を持つ。本殿を包む自然の岩肌と清澄な空気は、参拝者に異界への入口を感じさせる。社殿右側には火防の神・秋葉山大権現の石塔が立ち、石段踊り場には「奉献 元治二年(1865年)」の銘を刻む手水鉢が今も現役で使われている。元治二年は幕末の動乱期にあたり、この手水鉢は地域の人々が激動の時代を生き抜きながら神への信仰を守り続けた証である。
この地が注目される歴史的な出来事が大正12年(1923年)の関…
逗子市新宿は相模湾に面した温暖な海岸部に位置する土地で、古代から人々が生活を営んだ。境内裏の崖には江戸時代以前から横穴が知られていたとも言われるが、その正体が明らかになったのは大正12年(1923年)の関東大震災である。山腹の崩壊により20数基の横穴墓が露出し、调查の結果、古墳時代末期(7世紀〜8世紀)の横穴式石室墓群と判明した。出土した直刀・銅釧・玉類・土師器・須恵器は、相模国三浦半島の付根に位置するこの地域に有力な豪族集団が暮らしていた事実を示している。
当社の創建は江戸時代前期(17世紀)と伝わり、京都の伏見稲荷大社から稲荷神を勧請して新宿地区の鎮守とした。「新宿」の地名は、江戸時代に…