横浜市青葉区田奈に鎮座する稲荷神社で、倉稲魂命(宇迦之御魂神)を主祭神として祀る。田奈という地名が示す通り、この地は古来から稲作が盛んな農村で、稲の神である稲荷神への信仰は特に篤かった。稲荷神は五穀豊穣だけでなく、商売繁盛・工業育成・家内安全など多方面の御利益で知られ、農業から近代産業まで幅広く崇敬されてきた。田奈の農民たちは春の種蒔きと秋の収穫の度にこの稲荷神社を参拝し、実りの感謝と豊作の祈願を行ってきた。朱塗りの鳥居が連なる参道は、住宅地の中でひときわ目を引く聖域として存在感を示している。境内には狐の石像が対で並び、稲荷信仰の象徴的な景観を形成している。初午の日(2月最初の午の日)には地域の人々が稲荷神社に参集し、商売繁盛と家内安全を祈る初午祭が賑わいをみせる。田奈地区の農業の記憶を今に伝える稲荷神社として、地域の歴史的アイデンティティの一端を担っている。