宝珠院は、真言宗御室派(おむろは)に属する寺院です。御室派の本山は京都・仁和寺(にんなじ)であり、宇多天皇が出家して初代門跡となった由緒ある門跡寺院を頂く宗派です。宝珠院はその末寺として、金沢の地に長く祈りの場を提供してきました。
金沢区は、かつて「武蔵国久良岐郡六浦荘(むさしのくにくらきぐんむつうらのしょう)」と呼ばれた地であり、北条氏の一族である金沢北条氏(かねさわほうじょうし)がこの地を治めました。称名寺(しょうみょうじ)をはじめとする寺院群が栄えたこの地域において、宝珠院もまた地域の信仰を支える一端を担ってきたのです。
宝珠院は「金沢七福神めぐり」の霊場のひとつとして、寿老人(じゅろうじん)を祀っています。寿老人は長寿・福徳・子孫繁栄を司る神であり、白鹿を連れた老翁の姿で表されることが多く、「長き命を全うしたい」という人々の切なる願いが象徴されています。
金沢七福神めぐりは、金沢区内に点在する七つの寺院を巡ることで、七種の福徳を授かるとされる巡礼コースです。静寂に身を置くと、かつての巡礼者たちが一歩一歩踏みしめた足跡を感じることができます。
真言宗は弘法大師(こうぼうだいし)空海が開いた密教宗派ですが、歴史の流れのなかでいくつかの系統に分かれています。以下に主要な三派の特徴を整理します。
皇室ゆかりの門跡寺院を本山とする。格式が高く、仁和寺の「御室桜」でも知られる
成田山新勝寺・川崎大師を傘下に持ち、民衆信仰と密接に結びつく
宝珠院が属する御室派は、皇室との縁が深い格式ある系統です。仁和寺の「御室」とは、宇多天皇が退位後に住んだ御所(おむろ)に由来する名称であり、先達の精神が息づいています。