大神神社は三輪山そのものを御神体(神の体そのもの)とする神社であるため、御神体を安置する本殿を必要としません。社殿建築が発達する以前の「自然崇拝」の形を今に伝えており、日本の神社信仰の原初的な姿を示す貴重な存在です。拝殿の奥の三ツ鳥居を通じて、参拝者は山に直接祈りを捧げます。
大物主神は大国主命の「和魂(にぎみたま)」——穏やかで恵みをもたらす魂の側面——として三輪山に鎮まったとされています。大国主命が出雲大社に祀られる縁結びと農業の神であるのに対し、大物主神は疫病鎮め・病気平癒・産業発展の守護神として大和(奈良)の地を守ります。神話上は同一神の二側面という関係です。
三輪山への登拝は可能ですが、一般の山歩きとは異なり、神域への登拝として厳格な作法が求められます。大神神社拝殿西側の狭井神社で受け付け、白い布を首にかけて入山します。写真撮影・飲食・私語は禁止。午後2時(夏季は正午)に受け付けが終了するため、早朝参拝が望ましいです。
古代日本において蛇は脱皮による「死と再生」の象徴として霊的な力を持つ存在と見なされており、大地・水・豊穣の霊威と結びついていました。大物主神が蛇の姿で現れるという伝承は、神が自然の霊力そのものであることを示しています。現在も境内では蛇の好物とされる卵や酒が奉納され、「巳の神杉」への信仰が続いています。